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愛の極限 カミーユ・クローデル [美に生きる]

ワルツカミーユのアトリエを訪れたポールの日記には次のように記されています。

「狂ったカミーユ。・・・中略・・・おぞましい不潔さ、彼女はものすごく肥って、顔は汚れたまま、単調で金属的な声でひっきりなしにしゃべっている」
by 訳:渡辺守章

カミーユが45歳のことです。そう、いまの私と同じ・・・45歳。

ロダンと決別した10年後のことです。その時代に、彼女は何が欲しかったのでしょう。弟のポールに、容姿や生活を貶されるような日々と姿に変わり果てるほどに・・・。




カミーユ・クローデル―天才は鏡のごとく
詩人のポールは、「この裸の若い女、それは私の姉なのだ。嘆願し、屈辱を受け、ひざまずく。あの美しく誇り高い女が、こんなふうに自分を描いている」と、ブロンズの「分別盛り」をそう語ったのです。

メルシャン軽井沢美術館では、「カミーユ・クローデル」展を5月21日まで開催しています。一生分の欲求を使い切ったあまりにも激しい愛と欲望のカミユの作品。


漆黒の華 黒椿 [花物語]

Camellia japonica 'Night Rider'

「そはかのひとか」

ああ、たぶんあの方だわ!
おののきの中にひとりぼっちの魂が
幾たびか神秘な絵の具で描き楽しんでいたのは

あの方だわ!
控えめで注意深く悩める心の扉にあらわれ
恋に私を目覚めさせ新しい情熱を燃え立たせたのは
その恋に、それは全宇宙の鼓動であり
神秘的で誇り高く心には苦悩となり歓喜となる

1847年、ひとりの女性が23歳の短い生涯を閉じました。マリー・デュプレシという高級娼婦。かつて恋人だったアレクサンドル・デュマ・フィスは、マルグリッド・ゴーティエとして、彼女をお墓の中から小説「椿姫」という棺へおさめたのでした。

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歌姫 Nachtigall [天地 あまつち]

作家ローベルト・ムージルの短篇小説「クロウタドリ」は、夜に声を響かせるナイチンゲールの声を聞き、人生がかわる物語です。実は、その声は、黒つぐみだった・・・のですが。

ドイツでは「春告げ鳥」といわれるのが、黒つぐみと友人のLeiが紹介していました。ナイチンゲールとは、小夜鳴鳥のこと。3月25日のエントリー『”墻靡 そうび”を語る 』で、ファラド-ウディン・アタールの「鳥の議会」にでてきたサヨナキドリのことです。

ただただその美しい歌声だけが夜に昼に鳴り響くというナイチンゲール。ミルトンの詩編『思いふける人』 《Il Penseroso》では「最も音楽的な、最も憂鬱な」とされ、嘆きの歌をうたう鳥として扱われ、ヘンデルが作曲をしています。またイギリスの詩人ジョン・キーツの『ナイチンゲールに寄せる歌』は、サヨナキドリのたえなる夜の歌を伝えています。

ペルシャでは、薔薇に恋したサヨナキドリは夜通し歌いつづけ、鳥の胸の血でみるみる薔薇を真紅に染めたという伝説があります。「鳥の会議」で、サヨナキドリが「私はバラのこと以外何も考えない。ルビーのようなバラ以外のものは何も欲しくない。……サヨナキドリが愛する者と離れて、一夜たりと過ごすことができようか・・・?」という一節がおわかりいただけるでしょう?

オスカー・ワイルドの『バラとナイティンゲール』、アンデルセンの『ナイティンゲール』など、このナイチンゲールは、もともとギリシャ神話の物語に由来し、ピロメレ(フィロメーレ)というのが、この鳥のもうひとつの名。古代ローマの大詩人オウィディウスOvidius(B.C.43-A.C.18)の著「Opera omnia」は、中村善也訳・岩波文庫のオウィディウス 変身物語〈上〉〈下〉とされて読み継がれています。この「Opera omnia」に、ギリシャ神話の「プロクネとピロメラ」が小夜鳴鳥になった伝説が描かれています。ミルトンの叙事詩失楽園では、愛しあうアダムとイヴのシーンや、イヴを堕落させようとするサタンが夢の中で語るセレナードに、小夜鳴鳥が囀るのです。

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七曜日 [天地 あまつち]

友人のXAIが、”つぶやくよう”なBlogをはじめました。2度目のエントリーが「April Fool 」でした。そこに、フランスでの暦が由来とありました。フランスの暦ですが、『詩人ファーブル・デグランティーヌによって創案された文学的な月名が付けられ、さらにすべての日付に植物にちなむ名がつけられているんだ。』と記してあります。浪漫がありますね。

ところで暦の七曜日は、宇宙から命名されています。天球上を移動する太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星の7つの天体、いわゆる七曜が由来し、その日は守護星の名を以て呼ばれるようになったのですね。

太陽の日曜日 Diēs Sōlis ディエース・ソーリス:太陽
月の月曜日  Diēs Lunaeディエース・ルナエ:月
火星の火曜日 Diēs Martisディエース・マルティス:マルス(英名マーズ)
水星の水曜日 Diēs Mercurīディエース・メルクリース:メルクリウス(英名マーキュリー)
木星の木曜日 Diēs Iovis ディエース・イオウィス:ユピテル(英名ジュピター)
金星の金曜日 Diēs Veneris ディエース・ウェネリス:ウェヌス(英名ヴィーナス)
土星の土曜日 Diēs Saturnī ディエース・サトゥルニー:サトゥルヌス(英名サターン)

天体のほかに、ローマ神話の神の名もつけられています。

The Mirror Of The Gods

The Mirror Of The Gods

  • 作者: Malcolm Bull
  • 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr (T)
  • ギリシャ、ローマの神々が芸術の世界でいかに復興してきたかを書いている本です。
  • メディア: ハードカバー

さて、フランスでは一時期、一週間が「十日」だったといいます。フランス革命直後にフランスのみで使われた暦法なんですよ。当時のカレンダーの画像と共にご紹介します。

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”墻靡 そうび”を語る [花物語]

「薔薇の秘儀」はアプロディテに捧げられた秘儀であり、「キプロス人は、アプロディテのバラがどういう花なのか知っている者しか愛さない」というのは、 ギリシア詞華集『花冠』に採録された12編の詩の古代ギリシア女流詩人ノッシス。その「ギリシアの愛の女神」とも「運命の女神」ともいわれるアプロディテは、「海の露」rosmarina と名づけられたローズマリー(バラ-マリア)の樹によって表されます。薔薇の特別な意は、古代の詩や神話、寓話がおしえてくれます。

-詩人セデュリウス-
茂みの栄光にして、王冠なる愛らしきバラの
自らはとげを持たねど、とげの間より咲き出でしごとくに、
イブの根より萌え出でし新しき乙女マリアは、
古き昔の最初の乙女の罪をあがなえり

-ファラド-ウディン・アタールの『鳥の議会』Parliament of the Birds -
私は愛の秘密を知っている。夜を通して私は愛の呼びかけをする。……バラの花を動かし、恋人たちの心を動かすのはこの私なのだ。……バラが夏再び咲き匂うとき、私の心は開き喜びに震える。私の秘密はみんなにはわからないが、バラだけはそれを知っている。私はバラのこと以外何も考えない。ルビーのようなバラ以外のものは何も欲しくない。……サヨナキドリが愛する者と離れて、一夜たりと過ごすことができようか?

The Parliament Of Birds (Hesperus Classics - Poetry)

The Parliament Of Birds (Hesperus Classics - Poetry)


  • 作者: Geoffrey Chaucer
  • 出版社/メーカー: Hesperus Pr
  • 発売日: 2004/10/14
  • メディア: ペーパーバック

12~3世紀に、聖母マリアは、「天界の女王の宮殿」であるノートル・ダム大聖堂において、女神として崇拝され、「薔薇」、「薔薇の蕾」、「薔薇の花飾り」、「薔薇の園」、「薔薇の花輪」、「秘密の薔薇」あるいは「最も聖なる薔薇の園の女王」として呼びかけられたのです。その女神の身体はまた、自らの内部に、男性の神性の本質を内包する宇宙でもありました。詩人セデュリウスもサヨナキドリも、そう謳っているのです。

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”墻靡 そうび” 古代の山茨 [花物語]

墻靡とは薔薇のこと。

「薔薇」は古代ローマでは「ヴィーナスの花」として知られ、ヴィーナスに仕える聖娼たちのしるし。「薔薇のもとで」(sub rosa)語られる秘密は、ヴィーナスの性の秘儀にとって欠くことのできない要素で、非入信者に明かすことは許されなかったらしいとは、―友人のblog―にも記してありました。

これは、ヴィーナスと恋人アドニスとの密会の秘密が洩れないように、沈黙の神ハルポクラテスにお願いし、そのお礼に送ったのが、「バラ」の花だったと言うローマ神話があるからです。画像は古代ギリシャ時代の山茨(薔薇の原種)です。

                そりゃ、ぼくのバラの花も、なんでもなく、

                そばを通ってゆく人が見たら、

                あなたたちと同じ花だと思うかもしれない。

                だけど、あの一輪の花が、ぼくには、

                あなたたちみんなよりも、たいせつなんだ。  

                                by サン=テクジュペリ作 「星の王子さま」

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不思議な眠りの花 [花物語]

ギリシア神話から 
柘榴の実を口にしたため、恵みの女神デメテルの娘ペルセポネは、冥界の王ハデスにさらわれます。女神デメテルは眠りを忘れるほど、ベルセポネの行方を追いつづけました。あるとき、冥界を思わせるような眠りの神ピュプノスの宮殿を訪れます。それは、太陽神が一度も訪れたこともない、雲と霧に覆われ、冥界のレーテ川の水音だけが聞こえ、不思議な色で香りがない花が、一面に咲き乱れていました。眠りの神のヒュプノスは、「あなたは眠らなければ、植物達は次期に枯れていくでしょう。」と云って、小さくて不思議な花の実を渡します。それが芥子の花の実。眠りの神ピュプノスは芥子の花を摘み、液を集めては、地上に夜が来ると、これを一面に撒き散らすのです。鳥も獣も人間も全ての生き物を眠らせる・・・。眠りの神ピュプノスは、どれも同じ姿をした夢を廻り漂わせ、眠りについた人間に夢を与えているのでした。この芥子の花言葉は忘却といわれています。

この青い芥子は、Dennis Magnussonの花の画で"Blue Himalayan Poppy"です。つまりヒマラヤの青いケシなのです。世界の名花といわれる所以は、天空に咲く奇跡の花だからなのです。世界最高峰の山々が連なったヒマラヤ山脈やそれに続く、中国 雲南省、四川省、東部チベット、ミヤンマーに咲き誇る眠りの神ピュプノスの宮殿。3000m~5000mの高地にしか咲かない幻の名花とも云われ、神秘的な美しさで見る人を魅了する不思議な花です。

The Routledge Handbook of Greek Mythology
Based on H.J. Rose's Handbook of Greek Mythology

The Routledge Handbook of Greek Mythology:Based on H.J. Rose's Handbook of Greek Mythology作者: Robin Hard
出版社/メーカー: Routledge
メディア: ハードカバー
和書 ギリシャ神話集


万緑叢中紅一点 [四字熟語]

私のSNSサイトのイベントテーマで、交流のあるオーナーを、四字熟語に譬えるということがありました。そのなかでT氏より頂いたのが万緑一紅です。中国宋代の詩人王安石が詠む「石榴詩」の「万緑叢中紅一点」です。

「緑叢中紅一点 人を動かすに春色多くを用いず」

万緑は一面の緑、叢中は草むらの紅色の一輪の花は 旧約聖書にもその名を知る 柘榴 。一つだけ異彩を放つものは、しだいに、男の性の中に、一人異なる性をもつ女性を指し示すようになりました。ざくろは、英名をPomegranatといいます。円熟した優美・円熟の美は柘榴の花詞ですが、柘榴の実の花詞は愚鈍。ギリシア物語では、シデーという娘が、母なき後に、父から情交をせまられ、わが身をおぞましく想い悲しみ、死を選びます。神は、彼女の魂をザクロに宿らせ、父親を鳶に変えたといいます。

キリスト教美術では、エデンの園の生命の木として描かれている柘榴は、、仏教では「右手に柘榴を持つ鬼子母神像は、釈迦が訶梨帝母に柘榴を与え、人の子のかわりにその実を食べよ」と戒めたという説話が日本に伝わり、人肉の味がするとして、昔から好まれなかったといいます。

タロットカードでは、柘榴の象徴の暗示をしることができます。

         Ⅲ THE EMPRESS


柘榴の実のガウンをまとった女性。彼女は、月桂樹でかこい、十二個の星がちりばめられた金色の冠をかぶり、真珠のネックレスを首につけ、右手で先の丸い金色の笏を掲げています。その衣装は、女性性器を暗示する柘榴の実の模様。彼女が手にしている笏は、本能的な欲求・本能そのもの。また、赤い玉座は、純粋な本能を意味し、実り多き野外にあるため自然界そのものををも意味します。 柘榴の実は生々しく人を魅了する果実。タロットでは、満ちたりた状態、完成、自然、美しい環境、穏やかな心、人妻、繁栄の意がありますが、リバースすると、不和、プライド、贅沢、気まぐれとなり、全てルーズになりがちとなるのではないでしょうか。このカードが象徴する知性のほかに、収穫、芸術、夜、闇を秘め、その闇とはリバースではなく、性だと感じます。なぜか女帝が手にしている笏は、柘榴の蕾みのようにみえるのですよ。


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